今回の僕のメイン「ジャコメッティ展」では、
唯一の日本人モデルであった、哲学者・矢内原伊作さんの
ブロンズ彫刻と油彩画を主に、
やりとりした手紙やドローイングや写真の展示内容でした。
僕的には、「男」と題された油彩画がたまらなく良くて、
これが顔面で見れただけで大満足なのでした。
シュルレアリスムも理解できなかったジャコメッティ。
一見、やたら細長い彫刻や画に”現実離れ”しているようにみえるけど、
彼はずーっと、「見えているものを見えているままに描く」挑戦をし続けていた。
描けば描くほど、彫れば彫るほど、対象は小さく狭くなっていく。
その度に壊して、また作り続けていく。
ついには、実物を見ずに記憶をもとに作り出すことにシフトするけれど、
結局、同じように対象は小さく狭くなって消えていくのである。
対象に近づいていけばいくほどに、ますます後退していくことを知りながら続ける。
ジャコメッティ曰く、「小さくなければ現実に似ないのだ」と。
明らかに知覚と表現のあいだに「ずれ」が生じていたのだった。
彼は、このずれをずーっと考え続けて追い求めている。
なぜそこまで、こだわったのか。
その後、大きなものへの可能性を見出すことになるが、こうも言っている。
「細長くなければ現実に似ないのだった。」
「私が幸福なのは不可能なことを試みている時、
そしてそれが非常にまずしくしか進んでいない時だけである。」
生涯アトリエから出ることなく、過剰に必要に孤独に挑戦し続けたジャコメッティ。
僕は彼の作品を見るたびに勇気をもらうし、
自分への問いとして突き付けられるものを感じる。
周りがどうのこうのではなく、自分にとっての”当然”とは何か。
こうも言っている。
作品を作り続けるのは、私の戦いを戦うためだ。
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