2019年7月9日火曜日

僕だけのストレンジャー

今回の僕のメイン「ジャコメッティ展」では、


唯一の日本人モデルであった、哲学者・矢内原伊作さんの


ブロンズ彫刻と油彩画を主に、


やりとりした手紙やドローイングや写真の展示内容でした。





僕的には、「男」と題された油彩画がたまらなく良くて、


これが顔面で見れただけで大満足なのでした。





シュルレアリスムも理解できなかったジャコメッティ。


一見、やたら細長い彫刻や画に”現実離れ”しているようにみえるけど、


彼はずーっと、「見えているものを見えているままに描く」挑戦をし続けていた。



描けば描くほど、彫れば彫るほど、対象は小さく狭くなっていく。


その度に壊して、また作り続けていく。


 ついには、実物を見ずに記憶をもとに作り出すことにシフトするけれど、


結局、同じように対象は小さく狭くなって消えていくのである。



対象に近づいていけばいくほどに、ますます後退していくことを知りながら続ける。



ジャコメッティ曰く、「小さくなければ現実に似ないのだ」と。





明らかに知覚と表現のあいだに「ずれ」が生じていたのだった。



 彼は、このずれをずーっと考え続けて追い求めている。


なぜそこまで、こだわったのか。



その後、大きなものへの可能性を見出すことになるが、こうも言っている。


「細長くなければ現実に似ないのだった。」







「私が幸福なのは不可能なことを試みている時、

そしてそれが非常にまずしくしか進んでいない時だけである。」




生涯アトリエから出ることなく、過剰に必要に孤独に挑戦し続けたジャコメッティ。



僕は彼の作品を見るたびに勇気をもらうし、


自分への問いとして突き付けられるものを感じる。




周りがどうのこうのではなく、自分にとっての”当然”とは何か。



 こうも言っている。


作品を作り続けるのは、私の戦いを戦うためだ。

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